アメリカの「失業率」を読み解く①

貿易戦争勃発の懸念に起因して株式市場が揺れに揺れています。そんな中、アメリカの国内経済は好調だからアメリカ株はまだまだ上昇するとも言われており、その根拠の一つとしてよく示されるのが失業率低下ですね。

失業率が低いに越したことはないと思いますが、そもそも失業率低下=経済好調と鵜呑みにしていいのか疑問があるため、「失業率」について深く調べてみます。

失業率の計算方法は各国で微妙に異なることもあり、まずは国際労働機関(International Labour Organization:ILO)が公開している資料から、一般的な失業率の計算方法について理解しようと思います。

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失業率の計算方法

国際労働機関は、失業率の計算方法を以下の通り定義しています。

出典:ILO – Unemployment rate

要約すると、失業率=失業者÷労働力人口(就業者+失業者)×100です。恐ろしく単純な計算式ですね…しかし、失業率について正確に理解するには、「労働力人口」「就業者」「失業者」といった用語が何を指すかをさらに調べていく必要があります。

労働統計上の人口の区分

労働統計上の人口の区分は以下の通りです。それぞれの区分について見ていきましょう。

生産年齢人口/従属人口

生産年齢人口とは、各国の法定就業年齢(一般的には15歳)以上の年齢の人を指す、経済学の用語です。年齢の上限を設ける場合と設けない場合があり、高齢者が生産年齢人口に含まれるか否かで数値が大きく変わる点には注意が必要です。

The working- age population is the population above the legal working age, but for statistical purposes it comprises all persons above a specified minimum age threshold for which an inquiry on economic activity is made. To favour international comparability, the working-age population is often defined as all persons aged 15 and older, but this may vary from country to country based on national laws and practices (some countries also apply an upper age limit).

出典:ILO – Unemployment rate

一方、従属人口(被扶養人口ともいう)とは、生産年齢人口に該当しない人を指します。日本語だと「養われている」というニュアンスがにじみでていますが、養われるか否かは関係なく、純粋に年齢的な区分でしかありません。英語の方がしっくりきますね。

ちなみに、日本では15歳~64歳を生産年齢人口と定義しています。15歳以上(年齢上限なし)は、15歳以上人口と呼称して区別しています。

 

出典:総務省統計局

労働力人口

労働力人口とは、生産年齢人口の内、就業者(仕事に就いている人)+失業者(全く仕事をせず、求職中の人)です。

就業者

就業者とは、統計の調査期間中に仕事の対価として収入を得た人を指します。就業者というとサラリーマンを想像しますが、労働統計上の就業者は非常に幅広い概念です。

  • 家業の手伝いや内職で収入を得た人も就業者も含む。
  • 雇用労働者と自営業者の両方を含む。
  • フルタイム労働者とパートタイム労働者の両方も含む。
  • 産休や傷病休職等の休業者も就業者に含む。ただし、長期休業者を就業者に含むかは国によって基準が異なる。

失業者

国際労働機関は、失業者を以下の通り定義しています。

The unemployed comprise all persons of working age who were: a) without work during the reference period, i.e. were not in paid employment or self-employment; b) currently available for work, i.e. were available for paid employment or self-employment during the reference period; and c) seeking work, i.e. had taken specific steps in a specified recent period to seek paid employment or selfemployment.

出典:ILO – Unemployment rate

要約すると、以下3点を満たす人が失業者に該当します。

  1. 仕事(有給雇用または自営業)に就いていない
  2. 仕事があればすぐ就業ことができる
  3. 仕事を探す活動をしている

「2.仕事があればすぐ就業ことができる」「3.仕事を探す活動をしている」の両方に該当しないと失業者に該当しない点が重要です。仕事に就いておらず失業者にも該当しない人は、次の非労働力人口に含まれます。

非労働力人口

生産年齢人口の内、労働力人口に該当しない(=就業者でも失業者でもない)人を指します。典型的な例は以下の通りです。

  • 学生
  • 専業主婦
  • 働かず、労働の意思もない人(所謂Neet)
  • 重度の病気や障害を抱えていて、働けない人

非労働力人口に含まれる人の中には、今後就業者/失業者になりうる人が含まれており、そういった人を潜在的労働力人口とも呼びます。

  • 現在は就業不可だがもうすぐ就業可能になる人
  • 現在は仕事を探していないが、仕事に就くことができるなら就きたいと考えている人

This potential labour force comprises “unavailable jobseekers”, defined as persons who sought employment even though they were not available, but would become available in the near future, and “available potential jobseekers”, defined as persons who did not seek employment but wanted it and were available.

出典:ILO – Unemployment rate

失業率は万能の指標ではない

失業率の計算方法を調べる中で何点か気づいた点があります。

失業率が低い=国民の生活が豊かとは言えない

どんなに労働条件が悪くても、働きさえすれば就業者としてカウントされます。日本で近年問題になっている非正規雇用者増加のような問題は、失業率には全く現れないです。平均賃金等、他の指標も合わせてチェックする必要があります。

非正規雇用、ついに4割に
パートや派遣などで働く非正規雇用者の割合が年々増え、ついに4割を超えたとする調査結果が出た。正社員として就労を望みながらかなわないケースも多く、低賃金や不安定な雇用形態などの待遇改善が日本社会の大きな課題になっている。

解雇された人が次の仕事を探さないと失業率は増加しない

解雇された人が次の仕事を探せば失業率が増加しますが、次の仕事を探すことを諦めてしまうと、失業率はほとんど増加しません。次の仕事を探すことを諦めると非労働力人口に該当することになり、失業率の分母/分子の両方から除外されてしまうためです。

例)労働力人口100人/失業者3人(=失業率3%)の状態で、就業者3人が新たに解雇された場合

3人が次の仕事を探した場合→失業率6%(6/100×100)

3人が仕事探しを諦めた場合→失業率3.1%(3/97×100)

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